嗅覚障害の診療
失われた嗅覚を取り戻す。
嗅覚をあきらめない
非常に治りにくい患者さんもおられますが、嗅神経の強い再生力を期待して、根気強く治療を頑張りましょう。
* 嗅覚障害で初回の診察は時間がかかります。受診を希望の方は、まずは、お電話で受診日時を予約していただきますと大変助かります。

嗅覚は、大切な五感の一つです。
嗅覚は食事を楽しんだり、思い出を呼び起こしたり、危険を避けたりと、私たちにとって欠かせない感覚のひとつです。原因は炎症や神経の障害などさまざまで、問診や検査を通して原因を見極め、適切な治療法をご提案します。私は以前、滋賀医科大学で長年嗅覚障害の診療に携わってきました。治らないとあきらめている方も、ぜひ一度ご相談ください。

問診で嗅覚障害の原因を確認します。
問診と嗅覚障害の経過をお聞きすることで、嗅覚障害の原因や治りやすさを大体把握することができます。
嗅覚障害の原因には、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、感冒ウィルス、頭部外傷、老年性変化、先天性などがあります。
例えば、膿のような鼻水や鼻づまり、頭痛といった症状がある場合は、副鼻腔炎の可能性があります。風邪をひいた後、鼻水や喉の痛みなどの症状が治まっても、においがしない状態が続く場合は、感冒ウイルスによる嗅覚障害かもしれません。特に原因が思い当たらず、気づかないうちににおいを感じなくなっている場合は、原因不明の嗅覚障害や加齢による嗅覚障害の可能性があります。また、生まれつきにおいを感じない先天性嗅覚障害もあり、その場合は周囲の人が感じている「におい」というもの自体が理解できません。
*問診の詳細
思い当たる発症原因、嗅覚障害の発症時期・経過について確認します。嗅覚についてお気づきの点がありましたら、細かなことでも全てお話ください。(続きを読む)
徐々に進行する嗅覚障害であれば、鼻副鼻腔炎や老年性嗅覚障害の可能性があります。 急に発症したものであれば、感冒ウィルスによる嗅覚障害の可能性があります。
嗅覚障害がいつころから発症したかを明確にすることができれば、 病悩期間が明らかになります。嗅覚障害は比較的長期間回復する見込みがある疾患ですが、原因によっては、病悩期間が長いことから治療が難しい場合があります。
嗅覚障害がどのように変化するかも重要です。アレルギー性鼻炎や鼻副鼻腔炎では、嗅覚が変動することがありますが、嗅神経が傷害されている場合は、 嗅覚の変動がほとんどないことが多いです。
異嗅症状というものもあり、本来の匂いが違って感じられたり、何もないのに突然悪臭を感じたり、逆に嗅覚が異常に敏感になることがあります。多くは嗅神経の損傷によって起こりますが、精神的な要因によっても見られることがあります。
味覚障害の有無についても教えてください。嗅覚障害を主訴に受診する患者さんには味覚障害も自覚している場合が多いです。しかし、実際には味覚障害と嗅覚障害を混同している風味障害という患者さんも多いです。
既往歴についてはも教えてください。鼻副鼻腔炎、頭部外傷の既往がないか、それ以外には、肝障害や悪性腫瘍、高血圧、糖尿病、統合失調症、てんかん、HIV感染症、ミクリッツ病、ベーチェット病が、嗅覚障害を合併する基礎疾患として報告されています。 また、テガフール、メルカゾール、インターフェロンなど様々な薬剤が嗅覚障害を引き起こす可能性があります。
嗅覚障害によって、あなたがどのくらい日常生活で困っているかも教えてください。 食品の腐敗、調理、食思など食事関連の問題が多いです。また、火災・ガス漏れなど身の危険を感じることやうつ状態など気分への影響へ与えることがあります。

検査で嗅覚障害の原因部位を確認します。
当院では、初診の際に嗅覚検査や鼻腔ファイバー、鼻のCT検査を行うことができます。
これらの検査により、原因部位を特定することができます。

嗅覚障害の原因部位、病態を明らかすることで、治療方法を提案することができます。
嗅覚障害の原因には、鼻腔が狭くなりニオイ物質が嗅神経に到達しない気導性嗅覚障害、ニオイのセンサーが障害されている嗅神経性嗅覚障害、脳内の障害である中枢性嗅覚障害があります。
原因部位を特定するために、問診に続いて、鼻咽頭ファイバー検査、静脈性嗅覚検査、基準嗅覚検査、副鼻腔CT検査を行います。これらの検査で、嗅覚障害が原因がどこにあるか評価する事ができます。


治療方法を選択します。
副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎では、鼻の中の炎症が原因で嗅覚障害が起こります。この場合、抗炎症治療がうまくいけば満足できるほど嗅覚が回復する可能性が高いです。症状としては、においの成分が鼻の奥の嗅粘膜まで届かない「気導性嗅覚障害」が考えられます。長く炎症が続くと、嗅粘膜の神経が一部ダメージを受ける「嗅神経性嗅覚障害」を併発することもあります。治療は主に抗炎症作用のある薬を使い、嗅神経が傷ついていても、炎症が治まり鼻の中の空気の流れが戻れば神経の回復が期待できます。
風邪ウイルスや頭部外傷、原因不明の嗅覚障害は、嗅神経の回復を促す治療が中心です。症状としては嗅神経性嗅覚障害や中枢性嗅覚障害があります。残念ながら、今のところ嗅神経障害に有効な薬はありませんが、嗅神経には自然に再生する力があります。幹細胞レベルで失われた嗅神経は再生できませんが、残っている嗅神経の自然再生は期待できます。嗅覚再生を促す方法として嗅覚刺激療法の有効性が確認されており、症例集積研究(医学的根拠は弱いものの)では漢方薬の効果も報告されています。

回復の可能性について説明します
嗅覚障害は原因や病態によって回復しやすさが異なります。例えば、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などで鼻や副鼻腔に炎症がある場合は、1~2か月ほどで回復することが多いです。一方、感冒後や頭部外傷による嗅神経の障害が中心のものは治りにくく、回復に1~2年と長期間かかるうえ、十分に回復しないことも少なくありません。自分の嗅覚障害が今後どうなるのか不安になると思いますが、問診、精査を行ったのち、回復過程のどの段階にあり、どこまで回復する可能性があるのかをお伝えします。
